中小企業診断士

[中小企業診断士]二次試験を突破する3つのコツ

中小企業診断士は、経営コンサルタントとしての唯一の国家資格です。試験は一次試験、二次試験に分かれ、合格率はともに20%前後。試験全体での合格率は約4%前後と、いわゆる難関資格試験の一つにあげられます。

今回は、この難関資格試験でも、特に難解とされる「二次試験」について、突破するコツを考えてみます。

中小企業診断士とは

中小企業支援法(主管は経済産業省)に基づく国家登録資格で、「中小企業の経営診断の実務に従事する者」と規定されています。業務独占資格(※)ではなく、あくまで国家登録資格保有者「中小企業診断士」として、中小企業の経営をサポートする業務を行います。

(※業務独占資格:税理士や社会保険労務士のように、その資格を有する者でなければ携わることを禁じられている業務を、独占的に行うことができる資格。)

独占業務が無いにもかかわらず、中小企業診断士は、先の見通しが断ち難い経済環境下においてAIにも代替されにくい仕事として、近年、注目度が高まっています。

その理由は、下記の3点が考えられます。

  1. 数字に表われない、無形の価値(資産)を見出す能力が備わっている。
  2. 豊富な知識に裏付けられた、高いコミュニケーション能力を有している。
  3. 経営コンサルタントとして、多面的・俯瞰的視点を有し、顧客に戦略的価値を提供できる能力が備わっている。

中小企業診断士は、独立開業して様々な分野で活躍されている方がいる一方で、全体の6~7割がいわゆる「企業内診断士」だと言われています。これは、何を意味しているか。先の見通せない経済環境は、中小企業・大企業に関係なく、全て業種の仕事人に当てはまるからでしょう。

中小企業診断士の主な仕事は、(As-Is)企業の経営診断を行い、現状分析を踏まえ、(To-Be)企業の成長戦略のアドバイスを行います。前述の(3)で上げた3つの能力を有する中小企業診断士は、VUCA(※)の時代に対応できる将来性ある資格として需要が高まっています。

(※VUCA:Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の4つのキーワードの頭文字から取った造語。現代の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードで、未来の予測が困難な状態を指す。)

中小企業診断士試験の「二次試験」とは

中小企業診断士試験は、一次試験と二次試験があります。一次試験は7科目(①経済学・経済政策、②財務・会計、③企業経営理論、④運営管理、⑤経営法務、⑥経営情報システム、⑦中小企業経営・中小企業政策)で、一次試験の合格者のみが二次試験に挑戦できます。

二次試験は4科目
  1. 事例Ⅰ:組織・人事
  2. 事例Ⅱ:マーケティング・流通
  3. 事例Ⅲ:生産・技術
  4. 事例Ⅳ:財務・会計

事例Ⅰ~Ⅲは記述式で、事例Ⅳは経営分析や計算問題となります。事例Ⅳには明確な答えがある一方、事例Ⅰ~Ⅲの記述問題については、模範解答がない試験で、みんながおおよそ解答できる問題と、難解な問題とが紛れて出題されます。

「二次試験」が難しい理由

当然、「一次試験」の勉強で蓄えた知識を基に「二次試験」に向かうことになります。にもかかわらず、一次試験の知識だけでは太刀打ちできない“何か”があります。その難しさの理由は、出題範囲の広さや、試験時間の制約などがありますが、一番の理由は、模範解答が示されていないことがあげられます。特に事例Ⅰ~Ⅲについては、勉強していて何を書けばよいか分からない、という時期が必ずあるものです。

勉強のやり方は人それぞれで、予備校、通信教育、独学など様々ですが、多くの受験生は過去問、演習問題を繰り返すことになります。ただ、いくら過去問、演習問題を繰り返しても、試験当日には、「うぅっ」と思う特に難しい問題に出くわします。

この試験の特徴の一つに、満点を取る必要はないし、満点は取れない試験ということがありますが、みんなが取れる問題は確実に取る必要があって、正答率の低い問題でもある程度書けないと合格ラインには達しません。試験当日、どんない難しい問題が出てきても、落ち着いて対処できるかが鍵になります。

「二次試験」を突破する3つのコツ

みんなが取れる問題は、予備校、通信教育、独学で勉強している〇〇メソッドや〇〇の手順・ノウハウ、一次試験に勉強した知識などを整理し、過去問や演習問題で解き方を習得して、確実に解けるようにしましょう。その上で、正答率の低い問題、特に難しい問題への対処方法として、3つのコツを考えます。

(1) 映像でイメージする

普段、ニュースやネットで、いい会社(優良会社)、悪い会社(赤字会社、不祥事会社)に触れたとき、各事例に置き換えてみる。日頃この訓練をしておくことで、事例の本文を読んだときに頭の中で映像化しやすくなり、映像化することで、より具体的な記述に繋がります。習得した知識を事例問題に落とし込み、解答としてどのように導き出せばよいかの糸口を導き出す訓練になります。

(2) 自社に置き換える

普段のインプットの勉強や、過去問、演習の答え合わせのときに、自社の状況に置き換えて考えてみる。これは、なるべく具体的、詳細に、深く捉える方法として有効で、より細部にまで考えが及ぶことができるでしょう。また将来、企業内診断士として活躍したい人には特にお勧めで、合格後の即戦力化が期待できます。

(3) 事例企業の社長に寄り添う。

直接コンサルティングをするつもりで、何とかしたいと本気で考える。解答で何を書けばよいか分からないときや、選択肢が複数ありどちらかで迷う場合など、与件文から社長の想いを汲み取り、この社長がどうしたいかに真剣に寄り添い、記述する。

3つのコツを実践することで、試験当日、難しい問題に当たったときでも、何とか絞り出し、最後まで諦めずに解答を書くことができるでしょう。

最後に

二次試験合格者の多くは、試験後、手応えがない、来年どうしよう、などと思っているものです。なかにはネットの合格発表も見ておらず、合格通知が届いて知ったという人もいるくらいです。それほど、答えの分からない難しい試験です。

ただ、二次試験で勉強したことは、実務で必ず役に立ちます。

診断士試験に合格すると、一定の能力を有するコンサルタントとして、認知されます。これは、自分ではコントロールできない周りからの評価を得るということに繋がります。周りからの評価は、自分ではコントロールできません。コントロールできるのは、今の自分の思考と行動です。合格後の楽しい未来を信じて頑張って下さい。

二次試験勉強は、今が踏ん張りどころ。

がんばれ受験生!

ABOUT ME
sato
総合リース会社勤務。20年間営業で中小企業から大手上場会社を担当し、BtoB営業を経験。現在は審査業務を行い、企業の与信判断、案件審査を行う。2024年1月診断士試験合格。