皆さん、新型コロナウイルス感染症が流行してから、「生活習慣や行動パターンが変わった」と思うことが多くないでしょうか?
コロナ禍において急激に売り上げを伸ばした企業もありますし、逆に行動制限が解除されても、コロナ禍以前の売上にもどらない企業も多いですよね。
これは新型コロナウイルス感染症が流行してから、「生活習慣や行動パターンが変わった」と思うことに起因することが多いためです。
では、コロナ禍以前から「生活習慣や行動パターンが変わった」現在、今後のビジネスはどうしていけばいいのでしょうか?
それは、「コロナ禍以前に販売していた商品や提供していたサービス」をコロナ禍後に変わった「お客様の生活習慣や行動パターンに合うように変更する」ことです。
そのためには、「生活習慣や行動パターンが変わったお客さまのニーズ」を把握しなければなりません。
そこでこの記事では、生活習慣や行動パターンが変わったお客さまのニーズ、お客様の声=VOC(Voice of customer)を把握する手法についてお伝えしたいと思います。
誤解しがちな、顧客ニーズの調査
よく、「顧客ニーズの調査」という言葉を聞きますが、アンケート調査と混同されている方が多いように感じます。「顧客ニーズの調査」は、まさに「顧客」の「ニーズ」の調査ですので、顧客対象にならない方のニーズを調査しても、間違った結果になります。
例えば、レストランの経営者が新しい豚肉を使用したメニューを開発する際の参考にするための意見をヒアリングする際に、イスラム教徒の方にヒアリングしても新メニュー開発に参考になる意見は聞けませんよね。(イスラム教の信者の方は宗教上の理由で豚肉は食べません)
ですから、ビジネス拡大を目指して顧客ニーズを調査する際には、まず、ターゲットとする顧客や商品・サービスを明確にし、ターゲットとする顧客層から対象とする商品やサービスに関するニーズをヒアリングする必要があります。
ターゲットとする顧客・商品・サービスの決め方は?
ターゲット顧客を決めるためには、自社の事業戦略を明確にしなければなりません。
具体的には「既存顧客」をターゲットにするのか?「新規顧客」をターゲットにするのか?を決めると言うことです。
また、対象とする商品やサービスも「既存商品・サービス」をもっと売るのか?「新商品・新サービス」を新たに販売するのか?によってもヒアリングする調査内容が変わりますのでこれもあわせて決定する必要があります。
マーケティングを勉強された方はご存じと思いますが、「アンゾフの成長のマトリクス」というものがあります。これは「戦略的経営の父」と呼ばれた応用数学および経営学者であるイゴール・アンゾフ氏が考案した事業戦略を検討するためのフレームワークのことです。
これは、ターゲットとする顧客(市場)を既存と新規に分け、同様に対象とする商品(サービス)を既存品と新商品に分け、それぞれを組み合わせたターゲットごとに戦略が異なると説明したものです。
具体的には次の様になります。
既存市場・既存顧客 | 新規市場・新規顧客 | |
既存製品 | 市場浸透戦略 (既存製品x既存市場) | 市場開拓戦略 (既存製品x新規市場) |
新製品 | 製品開発戦略 (新製品x既存市場) | 多角化戦略 (新製品x新規市場) |
市場浸透戦略
1つ目の既存製品×既存市場は「市場浸透戦略」と命名され、現在の顧客に、既存商品やサービスを使用し売上増加を目指す戦略です。
そのためには、商品認知度を向上させたり、顧客の購入意欲を高める戦略が必要になります。
製品開発戦略
2つ目の新規製品×既存市場は、「製品開発戦略」と命名され、現在の顧客に、新商品や新サービスを提供することにより売上増加を目指す戦略です。
そのためには、既存顧客のニーズに合致した新商品やサービスを開発することと競合他社と差別化できる商品やサービスを既存顧客に提供することが必要になります。
市場開拓戦略
3つ目の既存製品×新規市場は、「市場開拓戦略」と命名され、既存商品やサービスを新しい顧客に販売し売上増加を目指す戦略です。
新たな顧客に既存品の拡販を目指す戦略ですので競合他社がある場合は自社の商品やサービスの優位点を、競合他社が無い場合は自社の商品やサービスを使用した場合のメリットを新しい顧客に効果的にPRする営業戦略をどのように組み立てるかが重要になります。
多角化戦略
4つ目の新規製品×新規市場は「多角化戦略」と命名され、新しい顧客に新しい商品やサービスを販売することにより売上増加を目指す戦略です。
多角化戦略は、過去お付き合いしていない顧客に新商品や新サービスを提供するため、活用できる過去のノウハウや知識がほとんどないため、予想外の費用や時間がかかるリスクが他の戦略より高くなりがちです。半面、大きな売上に繋がる場合もあり、ハイリスク・ハイリターンな戦略であることを認識しなければなりません。
ニーズ調査の注意点
このように、ターゲットとする顧客と対象とする商品やサービスによって戦略が変わりますので、当然、ヒアリング調査すべき顧客ニーズが変わります。
具体的な注意点をアンゾフの成長マトリックスにそって解説します。
既存製品×既存市場の「市場浸透戦略」
- 既存顧客に既存商品やサービスの商品認知度を向上させるための施策に関するヒアリング
- 既存顧客に既存製品の購入意欲を高める戦略に関するヒアリング
新規製品×既存市場の「製品開発戦略」の場合
- 既存顧客のニーズに関するヒアリング
- 既存顧客に競合他社の商品やサービスとの比較評価に関するヒアリング
既存製品×新規市場の「市場開拓戦略」の場合
- 新たな顧客に既存商品やサービスの良さを認識してもらえるPR手法に関するヒアリング
- 新たな顧客に競合他社の商品やサービスから当社の商品やサービスに乗り換えてもらえるための条件のヒアリング
新規製品×新規市場の「多角化戦略」の場合
- 新たな顧客に自社が販売していない商品やサービスに関するニーズのヒアリング
- 新たな顧客に希望する商品やサービスの提供方法やPR方法に関するヒアリング
調査結果の有効性は?
顧客満足度は支払った対価に基づき判断されます。よって過去に経験した結果をもとに頂いた意見の方が、有効性が高いと考えられます。
よくある事例としても、「こんな商品が欲しい」というお客様の声を参考にして商品化しても、欲しいと言っていたお客様が購入するとは限らない例が多いですが、「この商品をこのように改良してくれたらもっと買う」というお客様の声を参考に改良した商品を発売場合、ご意見を頂いたお客様が再購入される事例が多いようです。
よって、有効なヒアリング調査対象者としては次の方々からヒアリングした意見の有効性が高いと思われます。
- 常連客の声
- 購入者からのクレーム
- 競合他社製品のユーザー
- 試しに使って頂いた(体験頂いた)顧客
上記の調査対象者からのヒアリング方法を工夫することが大切です。
より良い調査方法について
顧客ニーズのヒアリングは如何に有効な意見をヒアリングするかが重要です。もし、デタラメな意見をもとに新商品や新サービスを発売しても売上増加に繋がる可能性は低くなるでしょう。
よって、もっともよい調査方法としては対面(フェイスtoフェイス)でのヒアリングをお勧めします。
その理由は、ターゲット顧客の選定がし易く、相手の反応が見えるので、相手の意見の有効性が判断し易い上に、回答者もデタラメなコメントをしづらいので、有効な意見の調査がしやすいと言えます。
他のヒアリング方法もあわせて下記に記載しますので、調査方法を検討する際の参考にしてください。
相手の反応 | 回答の信憑性 | ターゲット選定 | |
対面 | 見やすい | 高い | 冒頭での質問や観察で可 |
ネット | 見えない | 不明 | 冒頭の質問で可 |
メール | 見えない | 不明 | 顧客リストがあれば可 |
電話 | 分かる? | 高い? | 顧客リストがあれば可 |
郵送(はがき等) | 見えない | 不明 | 顧客リストがあれば可 |
まとめ
このように、ターゲットとする顧客と対象とする商品やサービスによってヒアリングすべき内容も変わってきますので、注意が必要です。
また、新規顧客へのヒアリング調査に関しては、既存顧客と異なり面識がありませんので、ヒアリング調査に難航する懸念があります。
よって、まず着手すべきは、既存製品×既存市場の「市場浸透戦略」、次に、新規製品×既存市場の「製品開発戦略」を想定し、事業戦略と顧客ニーズのヒアリングを始めることをお勧めします。