中小企業診断士の試験制度や合格体験記などはたくさんあるけれど、2次試験を合格してから登録までの方法って、あまりよく分からないな、という方向けに、この記事では、
- 4つの中小企業診断士の登録方法
- 登録までにかかる時間
- 登録までに必要な費用
について解説します。
4つの中小企業診断士の登録方法
中小企業診断士として活動するには、試験に合格するだけではダメで、経済産業大臣の登録を受ける必要があります。
4つの登録方法とは以下の通りです。
(1)2次試験に合格した後、
①実務補習
・診断協会が実施
②診断実務
・実際の企業に対して経営の診断助言業務等を実施
③実務従事
・民間のコンサルティング会社などが提供する実務従事に参加
(2)養成課程
となります。
ちなみに、中小企業庁のホームページを見ると、登録要件として以下のように書かれています。
- 中小企業診断士試験第一次試験および、第二次試験合格者
第二次試験合格日以降で以下1)または、2)の実務要件(15日以上)を満たすこと。
- 1)登録実務補習機関が行う実務補習を受講したこと
- 2)中小企業者に対する経営の診断助言業務または、経営の窓口相談業務に従事したこと。
- 中小企業診断士養成課程または、登録養成課程修了者
中小企業診断士試験第一次試験に合格し、中小企業大学校の養成課程または、登録養成機関が行う登録養成課程を修了したこと中小企業庁のホームページ
シュー・ツリー・コンサルティングで中小企業診断士登録に必要な実務日数をどのような方法で獲得したかをアンケートした結果をお伝えします。
比率としては、全体の約6割が実務従事でした。約4割が実務補習でした。
なお今回のアンケートでは養成課程の方はいらっしゃられませんでした。
また個別に中小企業に対する診断助言業務を実施して登録した方も一定数います。
以下、概要について解説していきます。
①実務補習
小企業診断士に登録する方法として、最も一般的な方法になります。
実務補習は一般社団法人中小企業診断協会が実施ており、実在する中小企業を対象に経営診断や助言などのコンサルタントとしての実務を経験できます。参加するには二次試験の合格が必要です。
通常5人位でチームとなり、中小企業へのインタビューから診断書の作成までの流れを学ぶ形が一般的です。協会の先輩中小企業診断士が指導員としてつき、1社につき5日分の実務を経験します。ここで一緒になった仲間は、最初にともに仕事をする中小企業診断士の仲間となるわけで、その後も長く強い絆で結ばれる人も多いようです。
登録までには15日以上の経験が必要ですので、これを3社分行うことで登録要件を満たすことになります。
実務補習は、春と夏の2回実施しています。
春は、二次試験合格発表の頃に募集がかかり、5日コース(1社)と、15日コース(3社)の2つがあります。いずれも実施日に平日が設定されていることがあり、会社員であれば休暇を取得するなど調整が必要になります。
夏は、5月頃に募集がかかり、7月や8月に実施されます。2023年の夏の実務補習は、5日コース(1社)のみの設定でした。こちらも実施日が平日にも設定されており、休暇取得などの調整が必要です。
開催場所は、2023年は春夏とも、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、の計7都市でした。
実務補習は最も一般的な方法ですが、そのため二次試験合格者の多くか参加を希望し、地域によっては定員がすぐに埋まってしまい、希望者が全員参加できないのが実情です。
そういった背景もあり、2022年の改正でインターンシップ型の実務補習が始まっています。各都道府県にある中小企業診断協会で実施していることころもあるようです。
②診断実務
二次試験に合格して、実務補習を受けなくても、実際に実務従事を15日間行うことで登録要件を得ることができます。
既にご自身もしくは所属している会社で中小企業に対してコンサルティング業務を行っている方などは、通常の業務を実務として実施することで対応することもできます。
また、知人などが経営する中小企業の診断助言業務を行うことでも可能ですが、そのようなツテを持つ方はなかなか少ないのではないでしょうか?
③実務従事
近年存在感が増してきているのが、民間のコンサルティング会社や受験機関などが、中小企業の経営診断助言業務を行い、それに参加することで登録要件に必要な日数を確保する、実務従事です。
内容は様々です。協会主催の実務補習のようなオーソドックスなものから、独自の特徴があるものもあり、日程も土日だけで完結するコースも提供されていたりと、会社勤めの方にとっては、実務補習よりも参加しやすかったりします。
一方、内容については様々であり、実際に体験した方の情報が得にくいなど、体験してみないと実態がわかりにくいといった懸念点もあります。
ネットで、「中小企業診断士 実務従事」で検索していただくといくつか該当する実務従事実施機関のホームページがヒットします。参加を検討する際は、内容を見て、ご自身に合った実務従事を探してみてください。
なお、シュー・ツリー・コンサルティングも実務従事の場を提供しております。
興味がある方はこちらを参照ください。
④養成課程
最後の養成課程は先の2つとはかなり趣が異なります。
まず、二次試験の合格が必要ありません。そのかわり、大学等の養成課程実施機関でみっちりと実際の診断助言業務を体験します。2023年6月時点では、14の機関が養成課程を提供しています。
養成課程は、より実地に即した中小企業診断士としての業務を体験できるメリットがありますが、登録に関して言えば、後述の通り時間と費用が最もかかる方法です。
二次試験が一次試験合格者の中で2割弱しか合格しない試験であることを考えると、セカンドキャリアとして中小企業診断士を考えている方などにはかなり有効な選択肢になるのではないでしょうか。
養成課程に参加するには、各養成過程実施機関の選考試験に合格する必要がありますので、ご注意ください。
登録までにかかる時間
シュー・ツリー・コンサルティングでは中小企業診断士の登録時期についてもアンケートを行いました。
登録1年目の3月から5月に登録された方が最も多く全体の45%でした。金融機関やコンサル会社勤務の本業で中小企業の診断助言業務を行っている方か、実務補習15日コースを受講された方の他、実務補習と実務従事を組み合わせた方も多かったのではないでしょうか?
次に多いのが、登録1年目の9月から11月です。夏の実務補習で登録要件を満たされた方がこの時期の登録になります。実務従事で登録要件を満たされた方も含まれていると思われます。
合格1年目の6月から9月に登録となった方は、実務従事や春の実務補習5日間と実務従事等の組み合わせで登録された方でしょうか?
中小企業診断士の登録は、二次試験合格もしくは養成課程修了から3年以内に行うことができます。お仕事の都合などで、実務補習や実務従事への参加が難しい方もいらっしゃいます。アンケートでの結果では5%の方が、1年目の12月以降に登録されていました。
全体では95%の方が合格1年目の11月までに登録されていたとの結果でした。
以下、それぞれの方法で、どのくらいの期間がかかるか、解説していきます。
①実務補習
最速3ヶ月(5月1日)
実務補習で登録要件を満たす最速の方法は、診断協会の春の15日コースに参加することです。2023年春の実務従事は、2月3日が開講で、最終日が3月13日でした。
実務補習に参加した場合、この期間に実際に集まる15日間だけではなく、チームで議論したり診断書類を作成したりと、仕事が終わった後の平日夜間などにも作業などを行う時間が必要となります。これは5日間コースでも同じです。
中小企業診断士の登録は、要件を満たして中小企業庁に申請書が受理されたら、翌々月の1日となりますので、2023年春の15日コースに参加した方は、最速で5月1日(約3ヶ月)に中小企業診断士として登録されました。
②診断実務
最速だと4月1日
実務従事も基本的には実務補習と同じです。15日間実務に従事し、登録要件を満たして中小企業庁に申請書が受理されたら、翌々月の1日に登録となります。
本業で中小企業の診断助言業務に携わっている方は、2月中に登録要件を満たすことも不可能ではないです。その場合4月1日の登録になります。
③実務従事
まちまちですが、受講してから5ヶ月程度
民間の実務従事に参加される方は、それぞれのスケジュールが各実務機関の提供するコースによってまちまちですので、仮に、実務従事が毎週土日どちらかのみの開催の場合ですと、登録要件を満たすのに15週、申請してから翌々月の1日に登録になるため、5ヶ月程度かかる可能性があります。
④養成課程
6ヶ月~2年 + 登録までの1ヶ月
養成課程の期間もまちまちです。
期間が6ヶ月程度のコースもありますが、平日毎日参加が必要になったりと、仕事を続けながらの参加は事実上困難です。働きながら養成課程に進みたい方向けに、平日夜間と土日のみのコースもあり、期間1年と2年のコースも設定されています。
詳細は各養成課程実施機関のホームページをご参照ください。
中小企業庁のホームページより養成課程実施機関一覧(注 一部リンク切れあり)
登録までにかかる費用
①実務補習
1日あたり12,000円(15日分で180.000円)
実務補習の費用は、15日コースが180.000円で、5日コースが60,000円です。1日あたりの費用はどちらも同じく12,000円です。
2022年4月に改訂され、値上がりしてしまいました。他の記事で書かれた時期がそれ以前の場合、以前の費用が載っているものもありますのでご注意ください。今後も変動がある可能性がありますので、正確な情報は協会のホームページでご確認ください。
(ご参考)2022年の価格変更の通知
②診断実務
原則費用は発生しない
ご自身のお仕事で実務従事になる方は、当然追加の費用は発生しません。
既に中業企業とのコンサルティングを行っている方や、税理士などのダブルライセンスで実務補習、実務従事が不要だと判断した方はこちらの選択をする方も多いです。
また、一部(5日分、または10日分)を実務補習・実務従事で行い、残りを診断助言業務で実施する方もいます。
③実務従事
まちまちですが、1日あたりの費用は実務補習と同程度以下
まちまちですが、概ね協会の実施する実務補習と1日あたりの費用に大きな違いは無いようです。
中にはかなり安いところもありますので、目的に合わせて活用を検討してみてはいかがでしょうか。
④養成課程
1百数十万円~約3百万円(250万円程度)
設定されているカリキュラムが、6ヶ月程度から2年と幅があるため、費用にも幅があります。それでも1百万円以上の出費が必要で、250万円前後のコースが多いようです。
但し、期間と費用が比例しているわけではなく、半年間でも250万円近くするコースもあります。例えば、独立行政法人中小企業基盤整備機構中小企業大学校東京校の養成課程は、機関は6ヶ月程度ですが、受講料は2,343,000円です。
具体的な金額は、各養成課程実施期間の募集要項等でご確認ください。
まとめ
中小企業診断士とした活動するためには、経済産業大臣の登録が必要です。
登録の方法は大きく分けて4種類あります。
- 実務補習(主に診断協会で実施)
- 診断助言業務
- 民間の提供する実務従事
- 養成課程
それぞれに特徴があり、それぞれに負担も異なります。中小企業診断士になりたいと思っている方が、この記事でご自身に合った登録方法を見つけることができましたら幸いです。