中小企業診断士の登録に必要な実務ポイントを得られる方法として、中小企業診断協会の実務補習が最も一般的な方法です。
しかし近年、中小企業診断士の2次試験合格者増加に伴い、実務補習に参加したくても定員になってしまって難しく、他の方法を探しているという方も多いのではないでしょうか。
実務補修以外にも実務ポイントを獲得できる方法がいくつかありますが、今回は民間で実施している実務従事サービスを紹介したいと思います。
実務補習と実務従事の違い
最初に実務補習と実務従事の違いを解説します。
「中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則」に基づき、実務補習の実施機関は登録されています。
その実務補習登録機関より、中小企業診断士の登録のための実務を経験するサービスが実務補習となります。
2023年8月現在、実務補習機関として登録されているのは中小企業診断協会と民間の1社のみです。
実務補習は中小企業診断協会が実施しているイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
実際には一定の条件を満たして申請し、登録されれば民間に企業も実務補習を行うことはできます。
ただし、実務ポイントを獲得するという点においては、後述する実務従事でも実施可能なことと、登録要件が全国で実施が必要などのハードルがあるため、2023年8月現在で民間で登録している機関がありません。
実務補修以外の、中小企業診断士の登録・更新のための実務の場を提供しているサービスを実務従事と呼びます。
実務従事は、実務補習と違って、実施した実務日数は中小企業診断士の更新にも活用可能です。
中小企業診断協会が実施する実務補習と民間の実施する実務従事の主な違いを説明します。
診断実務の内容の違い
中小企業診断協会が実施する実務補習(以後、実務補習)は基本的には総合的に経営診断を実施し、その内容を企業に報告します。
一方で実務従事は、必ずしも総合的な経営診断だけでなく、新規販路開拓やM&A、新規事業などの特定のテーマに絞って、より深く診断する場合もあります。
また、実務補習は成果物としてページ数の多い、報告書形式での提出が求められますが、実務従事では提案書を作成して企業に提案するという形式をとっているところが多いです。
また実務従事では、診断実務に必要な研修の実施やノウハウの提供など、各社様々な特徴を持ったサービスを提供しています。
価格
実務補習の価格はテキスト代除きで、5日間59,300円、15日間178,600円です。
実務従事の場合は、各社金額は異なりますが、基本的には実務補習より安いか同等の金額が多いです。
企業内診断士の参加のしやすさ
実務補習は土日だけでなく、平日昼間の参加も必要となり、企業内診断士の方は会社を休む必要があります。
一方で実務従事の場合は土日や平日夜など、企業内診断士が参加しやすい日時に設定しているケースが多いです。
一般の実務補習 | 民間企業が実施する実務従事 | |
診断範囲 | 総合コンサル型 | 実施企業・案件によって様々 総合コンサル型と特定テーマ型共にある |
成果物 | 決まった様式による報告書 | ニーズ優先の提案書 |
価格 | 15日間で18万円弱 | 実務補習と同等もしくは安いサービスが多い |
実施日 | 平日含めた実施 | 土日および平日夜間など企業内診断士に通いやすい日程 |
その他 | 必要な知識のインプット研修や継続案件につながるような提案ができるサービスもあり |
*実務従事サービスは提供会社によって内容は異なります。詳細は各サービス提供者を確認ください。
実務従事サービス3選
それでは実務従事サービスを提供している会社を紹介していきます。
株式会社シュー・ツリー・コンサルティング
株式会社シュー・ツリー・コンサルティングでは、実務従事で提案した内容を「クライアント企業に実践していただくこと」をゴールとして実務従事を提供しています。
クライアントに納得してもらい行動してもらうための必要なスキルとして、
- ヒアリング力(傾聴力や質問力)
- プレゼンテーション力(資料作成や伝え方の技術)
- ビジョン構想力・問題発見力
- 中小企業経営者と向き合う力
を、研修および実務従事の中で実践的に身に着けられるプログラムになっています。
また、ヒアリング→ビジョン設定および課題設定→行動につながる提案の一連の能力を身に着けられるように総合コンサルティングを中心に実施しています。
項目 | 内容 |
スタイル | 総合コンサルティング |
開催日数 | ・10日間 |
費用 | ・120,000円(10日間) |
特徴 | ・クライアント企業に実践してもらうことをゴールにプログラムを設計 ・診断実務に必要な研修の提供 ・土日のみの開催 |
シュー・ツリー・コンサルティングの実務中の説明会はこちら。
コムラッドファームジャパン
コムラッドファームジャパン(以下、CFJ)が提供する実践型の実務従事サービスは、実践を通じて稼ぐ力を習得できる場を提供しています。
経営革新計画や経営力向上計画など中小企業診断士が支援メニューとして活用できる中小企業施策は多数あります。CFJの実務従事では、こうした中小企業施策を活用し経営支援を実施しています。
相談企業は様々な業種・業態、相談内容も多岐にわたり、場合によっては経営課題が明確ではない企業様もいます。こうした時、徹底したヒアリングと対話から企業の課題をあぶり出し、その課題に直結した施策を打ち出して課題解決に導きます。実務従事では、一連の流れを経験できます。
項目 | 内容 |
スタイル | 特定課題解決 *:総合診断のコースもあり |
開催日数 | 6日間 |
費用 | 55,000円(6日間) *:リピート価格、モニター価格あり |
特徴 | ・中小企業施策・政策を活用する支援案件が多数 ・稼げる診断士になるためのスキルと経験を養う場 ・企業内診断士でも参加しやすい日程、地方の方も遠隔から参加可能 |
清水トラストコンサルティング
清水トラストコンサルティングの提供する実務従事は、一人ひとり個別でクライアントへ提案することができ、より実際の中小企業診断士活動に近い経験をすることができます。
Web参加や週末開催など、忙しい方も参加しやすい実施形式が人気です。
クライアントはベンチャー企業・〇代目社長、フリーランスが多く、事業課題も多岐にわたります。案件は、戦略立案などの一般的な案件に加え、M&Aや企業価値評価、人材開発など、昨今ニーズの高い分野をカバーしています。
また、2015年からサービスを開始していて、2023年現在では累計200名以上の方が参加しています。
項目 | 内容 |
スタイル | 特定課題解決 *:総合診断のコースもあり |
開催日数 | 5日‐15日間(開催日時を柔軟に選択可能) |
価格 | 47,000円(5日間)-90,000円(15日間) |
特徴 | ・Web参加や週末開催など、忙しい方も参加しやすい実施形式 ・チームでなく、一人ひとり個別でクライアントへ提案 ・戦略立案などの一般的な案件に加え、M&Aや企業価値評価、人材開発など、ニーズの高い分野をカバー |
まとめ
中小企業診断士の登録や更新に活用できる実務ポイントの獲得は民間の実務従事サービスでも獲得でいます。
民間の実務従事サービスは、各社特徴は異なりますが、
- 報告よりも、提案ベースのより実践的な内容
- 土日・平日夜などの企業内診断士でも通いやすい日時
などのメリットがあります。
実務補習だけでなく、実務従事も選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。