中小企業診断士

中小企業診断協会の実態とは?現役診断士アンケートを基に徹底解説!

中小企業診断士試験に合格し、登録前の実務補習が始まる頃から「中小企業診断協会」の名前を聞くことが多くなるかと思います。

「実際、何をしている組織なの?」「最初は入った方が良いの?」

この記事では、中小企業診断協会とは如何なる組織なのかをわかりやすく説明しながら、先輩中小企業診断士がどのように中小企業診断協会と関わってきたかを、独自のアンケート結果から見ていきたいと思います。新人中小企業診断士として、中小企業診断協会への入会を検討している方は必見です!

中小企業診断協会とは?

中小企業診断協会の概要

一般社団法人中小企業診断協会のHPによると、中小企業診断協会は「中小企業診断士相互の連携を緊密にし、資質の向上に努めるとともに、中小企業診断制度の推進と普及を図り、もって中小企業の振興と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とし、昭和29年(1954年)10月に設立」された団体です。その他、中小企業診断士試験や、中小企業診断士の登録、実務補習及び理論政策更新研修を実施する機関として、経済産業大臣の指定・登録を受けています。

本部は東京都中央区にあり、これとは別に47都道府県全てに各都道府県協会が設立されています。その内、東京都のみ都協会本部の傘下に中央・城東・城西・城南・城北・三多摩の計6支部が組織されています。

中小企業診断協会の事業内容

以下、一般社団法人中小企業診断協会HPを基に、主な事業を抜粋して紹介します。

1. 経営支援協力事業

1.中小企業支援機関が実施する事業への協力

 国、都道府県、都道府県等中小企業・ベンチャー支援センター、独立行政法人中小企業基盤整備機構、商工会、商工会議所、中小企業団体中央会などの中小企業支援機関が実施する事業に対し、支援企業への専門家派遣や窓口等での経営相談員を務めています。

 2.リレーションシップバンキングへの協力

 中小企業の経営改善に取り組む地域金融機関と連携して、経営診断・助言、経営相談や情報提供などを行っています。

 3.中小企業の再生支援への取り組み

 地域の中小企業再生支援協議会へメンバーとして参加するほか、地元の金融機関、中小企業支援機関などと連携しながら、中小企業の再生支援に取り組んでいます。

 4.国際協力

 経済産業省・中小企業庁をはじめ、各海外協力機関が行う海外支援事業に協力するために、当協会所属の中小企業診断士を海外に派遣しています。

 5.その他

 農・林業経営や医療福祉分野等、従来経営支援の対象としてこなかった分野に対しても、関連する行政機関や金融機関などと連携を図りながら、会員中小企業診断士の経営支援活動を積極的にサポートしています。

2. 人材情報提供事業

中小企業診断協会では、会員中小企業診断士の得意分野や専門分野、コンサルティングの実績、講演、執筆などの詳細なキャリア情報をデータベース化しています。このデータベースを活用して、民間企業や金融機関、中小企業支援機関などからのコンサルティング依頼や講演、原稿執筆などの依頼に対して、会員中小企業診断士のキャリア情報を即時に、かつ無料で提供しています。

3. 能力開発事業

1.中小企業経営診断シンポジウムの開催

 中小企業経営診断シンポジウムは、中小企業の健全な発展のために、高度な経営手法、経営診断技法等について深く研究し、広く経営診断・助言体制の強化を図ることを目的に、統一テーマによる会員中小企業診断士の研究論文の発表を行っています。

 2.地域に密着した課題に対する調査研究事業の実施

 会員診断士の一層の資質向上と知識の共有化を図るため、各都道府県協会において調査研究事業を実施しています。

4. 出版・情報事業

会報「企業診断ニュース」の発行(月刊)他、経営等に関する図書の発行を行っています。

上記事業のほか、中小企業診断協会は中小企業支援法に基づく経済産業大臣の指定または登録を受け、中小企業診断士の試験及び実務補習、理論政策更新研修等を実施しています。

各都道府県協会について

1. 入会

中小企業診断士を取得し、中小企業診断協会への入会を希望する人は、各都道府県協会(東京都の場合は支部にも)への所属が必要です。どの協会へ所属するかは各人の自由ですが、居住地や勤務先が存在する都道府県協会へ入会する方が大半と思われます。複数の協会への所属も問題ありませんが、入会にはそれぞれ入会金や年会費がかかりますので、留意する必要があります。

また、中小企業診断協会への入会は任意です。いわゆる「士業」の中では、協会への入会が必須な士業が多いので、中小企業診断士はその点で自由度が高いと言えるでしょう。その分、資格取得後の活動は自分に依存してしまいますので、協会へ入会しない方は自分の診断士としてのビジョンをしっかりと持つことが大切です。

2. 協会選び

各都道府県協会には、それぞれ特色があります。例えば、東京都中小企業診断士協会 中央支部は1,435名(2022年4月末時点)の会員を抱える都道府県協会最大の組織です。東京都だけでなく関東近郊在住者の所属者も多く、非常に活発な活動が行われています。その他、地域によっては独立診断士の多い協会や、国や自治体の受託事業に積極的に取り組む協会など、その実態は様々です。

もし気になる協会があれば、まずは協会の主催する新入会員交流イベントに参加してみるのが良いでしょう。このイベントは、協会や先輩診断士の活動紹介、グループディスカッション等による質疑応答などで構成されており、協会未入会の診断士が協会での活動をイメージしやすくする手助けとなるものです。各協会によって異なりますが、「スプリングフォーラム」「フレッシュフォーラム」といった名称で毎年4〜5月に開催されることが多いです。協会によっては、秋に「オータムフォーラム」を開催する協会もあるので、詳しくは各協会のHPをチェックしてみてください。

先輩中小企業診断士に聞く!中小企業診断協会のリアル

ここからは、先輩中小企業診断士83名に取ったアンケート(株式会社シュー・ツリー・コンサルティング調べ)を基に、中小企業診断協会の実態とナマの声を見ていきましょう。

①診断士の登録年数

登録初年度の新人から、6年目以上のベテランまで幅広い構成となっています。

②中小企業診断協会への入会有無

約9割の方が協会へ入会している(もしくは過去に入会していた)と回答しています。

③中小企業診断協会への入会満足度

約9割の方が「大変良かった」「良かった」と回答しており、満足度が高いことが窺えます。

④中小企業診断協会での活動内容

一番多い活動は「研究会活動」でした。協会へ入会した診断士の内、ほとんどの方は何らかの研究会に所属し、活動していることが分かります。また、複数の活動に従事している方が3分の2以上を占めており、自ら協会を活用しようという意欲の高い診断士も多いです。

⑤診断士活動における協会活動の割合

30%以下と回答した診断士が半数を占めており、診断士活動においてはあくまでサブ事業の一環として活動している方が多いようです。反面、70%以上と回答した診断士も約3割存在しており、協会メインで活動している方も一定数いることが分かります。

⑥都道府県協会への所属状況

アンケート対象者が関東近郊在住の診断士中心のため、関東地区の協会・支部への所属が目立ちます。中には、複数の協会・支部へ所属している診断士もいました。

⑦所属協会を選んだ理由

一番多い回答は「自宅が近いから」でした。活動効率を求めるのはもちろんのこと、地元に貢献したいという強い思いを持った診断士も一定数いるものと思われます。

次いで多かった「実務補習の先生からの推薦」は、診断士登録前に初めて接する中小企業診断士の先輩が実務補習の先生であるという方が、人脈面を期待して入会する例も多いのではないかと思います。

⑧所属協会の特徴や印象

所属する協会の特徴や印象について、本音ベースで語ってもらいました。個人の主観にはなりますが、ぜひ協会選びの参考にしてみてください。

1.東京都協会 中央支部

・最大規模の支部で、企業内診断士が多い印象。一方で人数規模が多いため、部会活動などに積極的に参加することで、ネットワークを広げることができた。

・研究会やプロコン塾、セミナーが充実しており、実務案件も多い。オープンでフラット。

・受け身で所属する分には良いが、会員数が多く主体的な活動は不向きかも。

 2.東京都協会 城東支部

・人数が少なくアットホーム、和気藹々。

・アットホームな雰囲気で楽しい。

 3.東京都協会 城西支部

・雰囲気は良い。独立診断士の方が少し多い印象。

・大きすぎず小さすぎず適度な人数であると感じる。

・ベテランの先生が多い。ガツガツせず緩やかな雰囲気。

 4.東京都協会 城北支部

・仕事紹介の機会が多く実践向き、フラットで風通しの良い雰囲気。

・良い意味で上下関係などはあまり感じられない。

・情報もオープンで、診断士歴に関わらず均等に実務の機会が得られる。

 5.東京都協会 三多摩支部

・他の東京の支部と比べて、人数が少なくアットホームな雰囲気がある。

・地元密着で、和やかな雰囲気。

 6.埼玉県協会

・他協会のような「先生」呼びが無く、良い意味でフラットな組織である。

・受託事業など案件も豊富で、手を挙げさえすれば色々な仕事に関わることができる。

・各種活動が活発に行われている。基本的に風通しは良く、ギズギスした雰囲気は無い。

 7.千葉県協会

・アットホームで和気藹々、風通しが良い。

・主体的に動くことで、活動の幅が広がっていくイメージ。

 8.愛知県協会

・良くも悪くも大人しい印象。

・人脈を広げる場として非常に有益であると感じる。

 9.大阪府協会

・人数が多く、研究会の数も多い。

・受託事業が多く、さまざまな案件の紹介がある。

・企業内診断士が多い。

・面白い人がたくさんいた。仲が良い。

⑨協会活動へのアドバイス

これから協会への入会を検討される皆さまに向けて、先輩診断士よりアドバイスをもらいました。様々な視点からの「ナマ」の声ですので、ぜひ参考にしてみてください。

・コロナ禍で入らない方も増えつつありますが、積極的に診断士活動に取り組むなら1年目から入会しておきたいです。入会有無で明らかに活動の幅で差が開きます。

・会費などコストもかかりますが、積極的に活動すれば仕事の紹介など声をかけられる機会も多くオススメです。

・協会に入っていると、繋がりが沢山できます。診断士はゆるい繋がりからの紹介がお仕事に繋がるので、協会に所属することをお薦めします。

・協会に入る/入らないで入手できる情報量が格段に違ってきます。診断士として活動したければ入ったほうが良いです。ただ入るだけでなく、何かしら部会や研究会に参加したうえで運営側に参画することが大切です。漫然と参加するだけでは会費を捨てるだけです。

・高い会費を払うのだから、使い倒すくらいでちょうどいいと思います。

・情報を得るためにはとても有効ですが、そもそも自分で仕事を取れるのであれば入る必要はないと思います。入るのであれば、いろいろなところに顔を出して貢献するとつながりができてよいと思います。

・独立を積極的に検討している診断士であれば、所属するメリットを受けられる気がします。

・企業内診断士の方で外部活動をあまりしないのであれば、入らなくてもいいかもしれません。人脈の広がりとコストの兼ね合いで検討する必要があると思います。

・協会によって雰囲気は大きく変わるかなと思います。合う/合わないもありますし、居住地や職場という視点以外にも、雰囲気や価値観で選んでも良いかなと考えます。

・新人勧誘イベントに参加して、少しでも雰囲気を知るのがいいと思います。

・私は埼玉しか知りませんが、可能なら東京などいくつかの協会・支部を見て、自分に合う協会を探すと良いと思います。あと、入会したら自動で何かが起こる、というものではありません。協会活動に積極的に参加してチャンスを掴むようにしましょう。

・協会の活動も経験するのはいいですが、自分が何をやりたいのかを見つけることの方が重要だと思います。

以上、先輩診断士のアンケートからは、大多数の診断士が協会へ所属し、多方面で活躍していることが見えてきました。診断士登録後に何をしたら良いか分からない、という方は、まずは中小企業診断協会のドアを叩いてみてはいかがでしょうか。

ただ、アンケートにもあった通り、漫然と所属しているだけでは意味がないこともご理解いただけたことと思います。中小企業診断士として華々しいスタートを切るために、常に自分との対話を怠らず、主体的に行動していくことが求められていると言えるでしょう。

ABOUT ME
佐合 和行
中小企業診断士、上級SNSエキスパート。大手印刷会社にて、企業のSNS戦略・運用を中心としたデジタルマーケティング支援や、セールスプロモーション支援に従事。また、自社主催のSNSセミナーでは、スピーカーとして登壇実績多数。