SDGs

SDGsに取り組もう ~中小企業こそSDGs対応を~

近年、SDGsに対する一般消費者の意識は高まりつつあります。

企業側の対応についても、大企業を中心にSDGsへの取り組みは進んできています。企業のホームページを見ると、トップページに「SDGs」「サステナビリティ」といった項目を設け、取り組みを積極的にアピールするようになってきました。しかし、中小企業については大企業と比べると、取り組んでいる企業がまだまだ少なく、今後の取り組みについて「未定」「取り組む必要はない」と考えている企業もあり、一般消費者とのギャップが生じています。

SDGsが規模に関係なくすべての企業に対して取り組みを求めている中で、中小企業としてSDGsにどのように対応していくべきか、考えてみたいと思います。

中小企業がSDGsの活用により期待できるポイント

環境省が公表した「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド(第2版)」では、中小企業がSDGsの活用により期待できるポイントを4つ挙げています。

(1)企業のイメージ向上

SDGsに取り組み、その取り組みを積極的にアピールすることで、多くの人に「この会社は信用できる」「この会社で働いてみたい」という印象を与え、より多様性に富んだ人材確保につながります。最近では学校でもSDGsに関する教育が進み、若い世代ほどSDGsに対する認知度や意識が高まっており、購買行動だけでなく、就職先にも影響を与える状況を鑑みると、SDGsへの取り組みは企業活動において効果が大きいといえます。

(2)社会の課題への対応

SDGsで示されている17の目標は、持続可能な未来実現のために示された目標です。これに対応することで、企業経営のリスクを回避するとともに、社会貢献や地域での信頼獲得にもつながります。中小企業は、大企業に比べると地域とのつながりが強く、地域住民との距離感も近いと考えられます。地域の課題に対応していくためにSDGsに取り組むといった活動も有効な手段になり得るのではないでしょうか。

(3)生存競争になる

企業の生存競争が激しくなる昨今において、SDGsへの対応がビジネスでの取引条件になる可能性があります。また、サプライチェーンのを支える中小企業では、大企業での意識の高まりや取り組み推進の中でSDGsに対する取り組み要請を求められる可能性もあります。

近年、サプライチェーン上での人権問題や環境問題については、特に関心が高まっています。原材料の調達や部材の製造過程において、強制労働や森林伐採などの行為が、最終製品の不買行動につながる事態に発展することも起こっています。そのような状況を鑑みると、自社の取り組みにおいてもSDGsに対応していることは取引条件の必須事項になる可能性は高いのではないでしょうか。

(4)新たな事業機会の創出

SDGsというキーワードを軸として、地域との連携や、新しい取引先や事業パートナーの獲得、新たな事業の創出など、これまでの活動にはなかったイノベーション、パートナーシップにつながる可能性があります。先ほどのサプライチェーンの事例に照らしてみると、SDGsに対応していることがこれまで取引のなかった企業との新たなビジネスにつながるといったことも十分に考えられます。

中小企業は大企業に比べると、SDGsに取り組んでいる企業は少ない状況です。しかし、すでに対応している中小企業は、その活動を積極的にアピールすることにより、企業イメージの向上につなげています。SDGs関連の書籍や白書等でも取り上げられている企業では、SDGs関連で繰り返し名前が挙がる企業も浮かんできます。

他社よりも先にSDGsに取り組み積極的にアピールし「中小企業でもSDGsに取り組んでいる」と認識してもらうことで、新たな取引先や新規事業創出、パートナーシップにつながる可能性はより高まるのではないでしょうか。

取り組みの方法

では、何から取り組めばいいのでしょうか。

これからSDGsに取り組もうと考えるときに、「何か特別なことをしなければいけないのではないか」「設備投資が必要なのではないか」といったようなことを想定される方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

(1)「できること」「できそうなこと」から取り組む

まずは、自社で現在取り組んでいることについて、SDGsで挙がっている17の目標と関連づけられないか、考えてみることです。

例えば、ある地域でカフェを営んでいるとします。カフェで提供している食事について、地元で取れる食材を積極的にしているのであれば、「地域」をキーワードに『目標11:住み続けられるまちづくりを』と関連させることができますし、地元で調達することで輸送距離が短くなることを考慮すると、その排出ガス削減にも貢献していることから『目標13:気候変動に具体的な対策を』と関連させることもできます。

また、週に1回、地域貢献の一環として、清掃活動を全社員で取り組んでいるとすれば、その取り組みが地域から評価されることで、社員のやりがいにもつながります。そう考えると『目標8:働きがいも経済成長も』と関連させることができます。

このように考えると、何かを新たに始めなければいけないということではありませんし、決して「難しいこと」「特別なこと」ではないことがお分かりいただけるのではないかと思います。それだけで、SDGsの取り組みに対するハードルも下がるのではないでしょうか。

(2)「経営理念」を確認し「将来ビジョン」を共有する

SDGsの取り組みを進めるうえでは、経営者がSDGsに取り組むという意思決定をするとともに、その取り組む理由や意義を従業員と共有する必要があります。

まずは「経営理念」を再確認し、SDGsの目標である2030年の自社の「ありたい姿」を考え共有したうえで、そこから具体的にそこへ向けて会社としてどのように取り組んでいくか、従業員と一緒に考えていくことになります。

環境省の活用ガイドによれば、中小企業は大企業に比べると規模が小さい分、意思決定の速さや従業員への情報伝達の速さなどが特徴、強みとして挙げられ、大企業よりもSDGsに取り組みやすいと指摘しています。素早い意思決定によりSDGsへの取り組みを進めることで、取り組み先進企業になることも可能ですし、新しい事業創出により他社との差別化を図り、持続可能な経営につなげていくことができます。

(3)「私の目標」を設定してみる

取り組みを進める上では、従業員が主体的、積極的に関わることが必要です。また、SDGsについて正しく理解することも必要です。

SDGsを正しく理解するために、自分たちが日ごろから取り組んでいることや、個人的な取り組み目標を設定して活動してみるのも有効です。

例えば、個人でできる取り組みとしては、以下のようなことが挙げられます。

・エアコンを使う部屋でなるべく家族全員で過ごす

・エコバッグを持参する

・車で移動していたところを自転車で移動する

・食べ物を残さない

・家事を分担する

SDGsの取り組みを進める上では、経営者が意思決定しその内容を従業員と共有して進める必要があります。取り組み方針等を積極的にアピールしていくこと、そして従業員が取り組みを正しく理解し主体的に取り組む土壌を醸成し、「やらされ感」をなくすことが重要です。

ABOUT ME
アバター画像
濵田 健嗣
中小企業診断士。大手鉄道会社の経理業務を長年担当し、グループ会社の会計・税務相談にも従事。現在はグループのショッピングセンターにてESを担当。現場で頑張るショップスタッフのモチベーション向上のための施策づくりに注力。